サロンで働いているのに「自分で確定申告して」と言われた——それ、あなたが個人事業主だからです
業務委託やシェアサロンでアイリストとして働きはじめると、ある日ふと不安になります。「私、サロンで施術してるのに、なんで自分で確定申告するの?」と。
結論から言うと、業務委託・シェアサロン・面貸しで働くアイリストは、サロンの従業員ではなく「個人事業主」として扱われます。だからサロンは年末調整をしてくれず、税金の申告は自分でおこなうのが原則です。
この記事は、数字が苦手なアイリストさん向けに、「なぜ申告がいるのか」「いる人・いらない人の分かれ道」「アイリストならではの経費」「最近よく聞くインボイスのこと」「今からできる備え」を、できるだけやさしく整理したものです。金額や制度は変わることがあるので、最終的な判断は税務署や税理士にご確認くださいね。
※この記事は2026年7月時点の情報です。
「業務委託」と「雇用」は、税金のあつかいがまるで違う
同じサロンで施術していても、契約が「雇用」か「業務委託」かで、税金の世界での立場は大きく変わります。
- 雇用(正社員・アルバイト・パート)=サロンに雇われている人。給与をもらい、年末調整はサロンがやってくれる。
- 業務委託・シェアサロン・面貸し=サロンと対等な立場で仕事を請け負う「個人事業主」。報酬をもらい、申告は自分でやる。
見た目の働き方が似ていても、業務委託は「ひとりの事業者」です。ここが、すべての出発点になります。売上の一部をサロンに支払う歩合の形で働いている場合も、基本的には個人事業主にあたることが多いです。
私は確定申告が必要?——分かれ道をやさしく整理
「じゃあ全員が申告しないといけないの?」というと、そうとは限りません。状況によって変わります。ここは大事なところなので、代表的なパターンで見てみましょう。
パターン1:アイリスト一本で働いている(本業が業務委託)
この場合は、原則として確定申告が必要です。1年間の売上から経費を引いた「もうけ(所得)」を計算し、そこに各種の控除を当てはめて税額を出します。
もうけが控除の合計を下回っていて税額が出ないケースもありますが、その判断は年によって変わる控除額に左右されます。「自分は出るのか出ないのか」は、正確な数字がそろってから税務署や税理士に確認するのが安全です。
パターン2:サロンに雇われつつ、副業でまつげエクステ(給与+業務委託)
本業が給与で年末調整を受けている人が、副業としてアイリストの業務委託収入を得ている場合、給与や退職所得以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてよいとされています(国税庁 No.2020)。
ただしこれは「しなくてよい」場合を定めたもので、20万円以下でも住民税の申告は別途必要になることがあります。ここは市区町村によって扱いが異なるので、お住まいの自治体にも確認してください。
分かれ道が複雑に感じたら
「給与もあって、業務委託もあって、収入もバラバラ……」という人ほど、頭の中だけで判断するのは危険です。まずは1年分の収入と経費を「記録として残す」ことがすべての土台になります。記録さえあれば、あとから正しく判断できます。
アイリストの経費——「これも入るの?」をまとめて確認
業務委託アイリストの節税は、日々の経費をきちんと拾えるかで大きく変わります。仕事のために使ったお金は、経費として売上から差し引ける可能性があります。
アイリストの仕事で経費になりうる主なものには、次のようなものがあります。
- まつ毛エクステ、接着剤(グルー)、リムーバー、テープなどの施術に使う材料費
- ツイーザー(ピンセット)、ライト、施術用ベッドなどの道具や設備
- サロンに支払う業務委託料や、シェアサロン・面貸しの席料
- 講習会・技術セミナーの参加費や、資格取得の費用
- サロンや自分の作品を宣伝するためのSNS広告費・撮影費
- お客様との連絡や予約管理に使うスマホ・通信費(仕事で使った分)
- 施術に関する専門書や雑誌の購入費
ここで大切なのは、「対象になりうる」という言い方をしている点です。同じ支出でも、仕事に使った割合や状況によって、経費にできる範囲は人それぞれ変わります。特にスマホ代や自宅の家賃のように、プライベートと仕事が混ざるものは、仕事で使った分だけを合理的に分ける「家事按分」という考え方が必要になります。自宅サロンの場合は、この家事按分がとくに大切になります。
なお、自分自身の美容院代やネイル代などは、業務との直接の関係を客観的に説明できないと経費として認められにくいとされています。判断に迷う支出は、自己流で決めつけず、税務署や税理士に確認するのが安心です。
最近よく聞く「インボイス」って、私に関係あるの?
アイリストとして独立すると、「インボイス」という言葉を耳にすることが増えます。これは消費税に関する制度で、請求書を「出す側」か「受け取る側」かによって関係の仕方が変わります。
業務委託でサロンから報酬を受け取っているアイリストは、サロンに対して「請求書を出す側」にあたることがあります。そのため、サロンによってはインボイスの登録を取引の条件にしている場合もあるようです。
ただ、インボイスに登録するかどうかは、売上の状況や取引先との関係によって判断が変わる、少し専門的なテーマです。登録すると消費税の申告が必要になるなど、影響もあります。ここは自己判断せず、契約しているサロンや税理士に、自分の場合はどうすべきかを必ず相談してください。
今からできる、いちばんやさしい備え
確定申告は、2月〜3月に一気にやろうとするから苦しくなります。分解すると、やることは「1年分の収入と経費を記録しておく」だけです。今から始められる、やさしい備えをまとめます。
- 事業用の銀行口座やクレジットカードを1つ用意して、仕事のお金とプライベートを分ける
- 材料を買ったら、その場でレシートを撮って記録する習慣をつける
- 月に1回、5分でいいので「今月のお金」を見返す時間をつくる
- 帳簿づけや申告書づくりに不安があれば、早めにアプリや専門家の力を借りる
「難しい会計の知識がないと無理」と思われがちですが、大事なのは知識よりも“ためこまない仕組み”です。日々の記録さえ流れていれば、確定申告の時期になってもあわてずにすみます。
数字が苦手なアイリストさんへ
業務委託やシェアサロンでアイリストとして働くということは、技術者であると同時に「ひとりの事業者」になるということです。最初は税金やインボイスの話が怖く感じても、当たり前のことです。
大切なのは、完璧に理解することではなく、まず「記録を止めないこと」。今までよく頑張ってきたあなたが、数字のことで消耗しないように、日々の記録だけは軽くしておきましょう。
「エール」は、数字が苦手な個人事業主のための、経営管理・会計補助アプリです。レシートを撮るだけでその場で記録でき、日々のお金の流れを一目で確認できます。まずは無料で使える範囲から、記録の習慣づくりに役立ててみてください。確定申告の書類づくり・印刷までをサポートします(提出はご自身でおこないます)。
数字のことで手が止まりそうになったら、エールのことを見てみてください。
なお、この記事は一般的な情報の紹介です。個別の税額計算や、自分が申告対象になるかどうかの判断、インボイス登録の要否は、必ず税務署・税理士などの専門家にご確認ください。
出典一覧
- 国税庁「No.2020 確定申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm (2026年7月15日参照)
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm (2026年7月15日参照)
- 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm (2026年7月15日参照)