分けていなくても、決まりに反しているわけではありません

事業用の口座を作ったほうがいいと聞くけれど、まだ作っていない。売上も生活費も、昔から使っている一つの口座に入ったままになっている。

まず、その状態が決まりに反しているわけではありません。

国税庁が個人事業主に求めているのは、帳簿をつけて、帳簿や書類を保存することです。この義務は、事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき業務を行うすべての方が対象で、所得税の申告が必要ない方も含まれます。白色申告の方も同じです。

ただ、この中に「事業用の口座を分けること」は入っていません。分けるかどうかは、決まりではなく、やりやすさの問題です。

では何がやりやすくなるのか。そこを見ていきます。

分けないままだと、年明けに何が起きるか

いちばん影響が出るのは、確定申告の時期です。

1年分の入出金を見ながら、1行ずつ「これは事業のもの」「これは生活費」と分けていく作業が発生します。

問題は行数ではなく、思い出せるかどうかです。10か月前の3,200円の引き落とし。あれは仕事で使ったサブスクだったか、家で見ている動画のほうだったか。通帳の記載は店名しか教えてくれません。

分けておくと、この判断そのものが要らなくなります。事業用の口座に入っているものは事業のもの、という前提が立つからです。作業が速くなるというより、迷う場面が減る、というのが実際の感覚に近いと思います。

ただし、分けても残る作業があります

ここは正直にお伝えします。

口座を分けても、事業のお金と生活のお金のやり取りは完全にはなくなりません。

たとえば、事業用の口座から生活費を引き出す。これは事業の経費ではないので、帳簿では「事業主貸」という科目で記録します。逆に、手持ちの生活費で仕事の道具を買った場合は「事業主借」になります。国税庁の「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」にも、この記載例が載っています。

個人事業では、事業主である自分と、生活者としての自分が、同じ人の中に同居しています。口座を分けても、そこは分かれません。

ですから「分ければ全部片づく」ではなく、「判断が要る場面が、かなり減る」というのが正確なところです。

分けたあとの、3つのルール

分けること自体より、分けたあとどう使うかで差が出ます。難しいことはしなくて大丈夫です。

1. 生活費は、月に1回まとめて移す

必要なたびに少しずつ引き出すと、その回数だけ記録が増えます。月初か月末に決めた額を一度だけ移すと、記録は月1行で済みます。

2. 仕事の支払いは、必ず事業用の口座から

引き落とし先の変更は手間ですが、最初に一度やっておくと、あとがずっと楽になります。カードも同じです。

3. 迷ったら、事業用に入れておく

事業かどうか判断がつかない入金は、いったん事業用の口座に入れて、あとから振り替えれば大丈夫です。判断を後回しにできる形にしておくほうが、手が止まりません。

なお、屋号を付けた口座にするかどうかもよく聞かれますが、これは取引先からの見え方の話で、記帳のしやすさとは別の問題です。急いで決める必要はありません。

年の途中からでも、遅くありません

1月1日から分けられているのが理想ではあります。ただ、思い立った日から分けても問題ありません。

その場合、その年は「分ける前」と「分けたあと」が混ざりますが、混ざるのはその1年だけです。翌年からはきれいに分かれます。

開業して数か月経ってから気づいた、という方はとても多いです。気づいた時点でいちばん早いのは、今日です。

分けたあとに残るのは、「記録すること」

口座を分けると、どれが事業のお金かははっきりします。ただ、それが自動的に帳簿になるわけではありません。記録は別に必要です。

エールは、そこを助けるためのアプリです。

レシートを撮ると、日付・店名・金額をAIが読み取って記録します。売上と経費の入力、集計の表示まで、日々のお金の管理は無料の範囲(経営者モード+詳しい数字モード)で完結します。複式簿記での記帳や、確定申告書類の作成が必要になったときだけ、経理モード(月490円・税込)をお使いいただけます。

数字が並ぶと手が止まってしまう。その感覚のまま使えるように作りました。


この記事の内容は一般的な説明です。ご自身の状況に応じた判断は、税務署や税理士にご確認ください。

出典